フォーチュンクッキー
「…いつも料理してるのか?」

「はい、お父さんは不器用なんで」

 くすりと笑うチビ助の声。

 あの人の良さそうなおじさんは、とてもじゃないけど料理ができるようにもみえないことに、頷いてしまった。


 ふと沸き起こった疑問。


「あれ、チビ助の母親って……」


 口にした瞬間、チビ助がぴたりと止まってしまった。

そういえばきいたことがあるような、ないような。



「────そこのデスクの上に写真があったんですけど、…知ってます?」


 また動き始めた手元。

だけど、チビ助は振り向きもしなかった。



 ……写真?

あったような、なかったような…。


 曖昧な記憶に首をかしげていたけど、チビ助はかまわず続けた。


「その写真に写っていたのが、あたしのお母さんの…凛子さんです」


 凛子。

その名前に一気に走り抜けるように思い出す。



 茜色の道をおぶって歩いた日。

あのとき、うずくまるように眠っていたチビ助を、慈しむように髪を撫でていた女性。


 …たしかチビ助に『凛子さん』って呼ばれてた。



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