フォーチュンクッキー
 おそるおそる振り向けば、サトの不満そうな顔がそこにある。


 こうしてサボるためには代返が必要不可欠なわけで。

誤魔化すように、がんばって笑ってみた。


「悪いな、サト」


 目を見開いて、手の力が抜けたのをオレは見逃さなかった。

もう首根っこをつかまれないようにさっと腕を振り払うように、廊下を全力で走った。


「た、太一のバカーっ!」


 そんなサトの叫びを背中に受けて、オレは自転車置き場に向かった。

かばんの取っ手を両肩に引っ掛け、真っ黒のいわゆるママチャリに乗り込む。



 行き先は…決まっていた。


乾いた風が頬を掠めて坂道を一気に下り、人の間をすり抜けるように疾り抜ける。



 この前と同じ時間。

ちょうどお昼が終わるころで、通り過ぎる公園には小さな子供が集まり始めていた。


 無邪気に笑う子の背中を、いとおしそうに見つめる母親たちの姿がやけに切なかった。



 更にペダルを漕いで、あじさい商店街を横目に風を切る。

ついこの前までは葉桜の並木道だったのに、今は褐色の色で埋め尽くされていた。



 キイ、と甲高い音を立ててブレーキをかけて到着したのは、まだ授業が終わっていない学校。




 …チビ助の通う、中学校。
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