落ちぶれ令嬢として嫁いだら、 黒騎士様の溺愛が待っていました
 プラチナは、銀の睫毛で忙しなく瞬いた。急速に大きくなっていく光景を、食い入るように見つめる。
 ミトロジアの王都とは規模から異なる都だった。周りを囲む防壁はなく、人の営みが外へと拡張し続けている。プラチナはそこに、開放感と活気を感じた。
 古く色あせた建物の多かったミトロジアとは違い、色とりどりの屋根、高低さまざまな家屋が並び、飛び抜けて背の高い時計塔のような建物もあった。

 外へ外へと伸長しているような土地の中、遠目にもわかるひときわ大きな建築物があった。
 ヴァルテールの操るグリフォンは、その大きな建物に向かって降下していく。建物の屋上は一部が巨大な平面の円になっており、グリフォンはそこへ着地する。遅れてついてきていたもう一体も同じようにした。

 ヴァルテールがはじめに降りると、

「失礼します」

 短く言って、プラチナの腰をつかんだ。

「……!」

 プラチナは小さく悲鳴をあげかけ、右肩のフィーがうなる。荷を下ろすようにグリフォンから下ろされ、プラチナはふらつきながら屋上を踏んだ。後ろの文官の男も、大きくよろめきながら下り立ち、盛大に安堵の息を吐いている。

 ――足音が聞こえてきたのは、そのときだった。
 屋上へと続く階段を上ってきた数名の兵士たちが、ヴァルテールと文官の男の元にやってくる。

「無事のお戻り、何よりと存じます。――その娘は?」
「ミトロジアからの〝戦利品〟です。これから陛下に拝謁します」

 そう答えたのは、文官の方だった。その言葉を受けた兵士の一人が、一礼して先に戻る。
 両手はいまだ縛られて立ち尽くしたまま、プラチナは不安が暗雲のように胸に広がるのを感じた。陛下というのはイストワールという国の、王たる人に違いなかった。

 戦利品という言葉が不穏な響きで耳に残る。思わずぎゅっと手を握ったとき、右肩にしがみつく小さな竜の存在に、心がわずかに慰められる。

(……フィーだけは、守らなくちゃ)

 文官が、兵士たちと共に先に屋上を下りていく。
 ヴァルテールに無言で促され、プラチナは彼らの後をついていった。
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