真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

岸くんは少し困ったような表情で、
「あの朝、俺、聞いたんです。発見した人の悲鳴。それで裏庭のほうに走って行きました」
と、言った。



「ということは、あなたも見たんですか?時田さんを」



息吹ちゃんの質問に岸くんは顔をしかめる。

息吹ちゃんは「あっ」と気づき、
「違います。好奇心で知りたい、とかじゃないんです。私達、時田さんのことを調査するように頼まれてて」
と、慌てた。



岸くんは「調査?」と呟いて、少し考えている。



「生徒会か何かですか?先生達から頼まれて?」

「違います。私達は先生達から頼まれたわけではないです。でも、依頼者はいます。……それに、生徒会ではなくて、文芸部です」



息吹ちゃんが言うと、岸くんは目を丸くして、
「え、文芸部って調査とかもするんですね。すごい……」
と、素直な態度に変わる。



(あ、話しやすくなったかも)



息吹ちゃんもそう思っているらしく、ホッとした様子を見せた。

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