真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「気まずそうだったじゃん。多分、滝口くんの目を気にしてたんだと思う。これ以上私達が目立つと、この先、岸くんからの証言が貰えなくなるかも」
「あ……っ、そうか。そうだよね」
証言することを良しとしない部員が、もし、サッカー部内にいたら、岸くんの居場所を奪ってしまうかもしれないんだ。
(よく気づけるよなぁ)
私だったら、そこまで気遣えないかもしれない。
ううん、何も気がつかないまま、岸くんを傷つけるようなことをしているかも。
「息吹ちゃんがいて、良かった」
呟くと、息吹ちゃんが笑った。
「こっちのセリフだし。メモ、すっごく助かる。覚えらんないからさ。それに……」
「ん?」
「……心強いよ、彩葉ちゃんがいてくれるだけで」
お互いの顔を見て、照れつつ笑ってしまう。
文芸部室に戻ってみると。
寧々様が少女漫画を読んでいた。
窓際で、ソファーに座って。
このソファーは何代か前の先輩が、学校で不要になったものを、部室の窓際に置くために貰って来たらしい。