真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

矢戸田さんは頷く。



「水川先生が陸上部の人達何人かと、多分サッカー部の一年生が走って来てくれて」
と、矢戸田さんが言う。



「私達は陸上部の人達に連れられて、裏庭から出たんだ」

「そう。もう見ない方がいいよ、って。足に力が入らなくて……。陸上部の人達に支えられながら歩いた」



ふたりに息吹ちゃんは、
「発見した時、他に誰かを見ませんでしたか?」
と、尋ねた。



ふたりは顔を見合わせて、首を振る。



「でも」と、立川さんが遠慮がちに口を開く。



「でも、私、登下校で使う通学バスの中で見たの。……滝口を」

「滝口くん、ですか?」



また滝口くんの名前が出て来て、私と息吹ちゃんは一瞬、目が合う。



「知ってる?滝口」
と、立川さんが聞き、
「はい。同じクラスなんです」
と、息吹ちゃんが答える。



「早い朝練だったから私は五時台のバスに乗った。学校に五時四十分くらいに着けるように」

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