真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「話したことはないですけれど」

「ツンツンした感じだもんね?話しづらいか」

「……いや、まぁ、そのぉ……」
なんて、私は返事に困ってしまう。



「市川さんってさ、元子役なんでしょ?芸能界にいたらしいよ」

「えっ、そうなんですか?」

「全然知らないよね?売れっ子の子役とかではないみたい」



立川さんはそう言って、一緒に頼んでおいたポテトをかじる。



「あ、市川さん、走って車に乗ってった」



矢戸田さんはまだ窓の外を注目していたらしい。

息吹ちゃんもじっとその車を見ている。








「今日はありがとうございました。色々とつらいことを思い出させてしまってすみません」



息吹ちゃんが頭を下げたので、私も隣でお辞儀をする。



「いいよ、また話そうよ。今度は楽しい話しよう?」
と、矢戸田さんはにっこり笑った。









ふたりと別れて。

私達は地元の駅まで帰って来た。

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