真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「距離感……ですか?」
門倉さんは頷く。
「こんな噂知らない?」と前置きして、
「橋谷先生って、気に入った生徒と付き合ったりするんだよ」
と、眉間にシワを寄せた。
「えっ、確か、あの先生って結婚してる……?」
「そう、既婚者。不倫してんの、生徒と」
衝撃的なワードが飛び出して。
私達は固まる。
一拍暗い遅れてハッとした私は、とりあえず今の情報をメモしておいた。
「……それでさ」
と、また何かを言いかけた門倉さんの表情が凍る。
「?」
門倉さんの視線を辿るように振り返ると、橋谷先生がこちらに向かって歩いて来る。
「げっ、聞こえてないかな」
と、門倉さんが言って、
「じゃあ、もう行くね」
と、美術室の自分の席に戻って行った。
「橋谷先生、お聞きしたいんですが」
と、息吹ちゃんが橋谷先生のそばまで行く。
「何かあったのか?えっと、確か……、六組だよな?」
橋谷先生はあごに手を当てて、考えるような仕草をする。