真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
息吹ちゃんが自己紹介し、私もふたりのそばまで移動する。
「あっ、藤沢」
「あ、はい。どうも」
さすが担任というべきか、私のことは認識してくれていた。
「なんだ、どうしたんだ?」
息吹ちゃんが、
「時田さんが亡くなった日の朝、先生のところに三組の市川 櫻子さんと、六組の加瀬 有沙さんが来ましたか?」
と、聞いた。
「え?」
橋谷先生は私を見る。
私は先生に、
「どうだったか、覚えていますか?」
と、重ねて尋ねた。
少し思い出すように考えてから、
「あぁ、来たよ。ふたりで。騒ぎがあった時も一緒だった」
と、橋谷先生が答えた。
(本当のことなんだ?)
私は実のところ、市川さんの嘘だと思っていた。
どうしてかはうまく言えないけれど、嘘だと思い込んでいた。
だから。
先生の言葉に驚いてしまった。
「そうですか」
と、息吹ちゃん。
その横顔がなぜかつらそうで。
悲しんでいるような、悔しがっているような。
複雑な表情だった。