真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
息吹ちゃんは眉間に寄ったシワを、指で伸ばしつつ、
「聞いてよぅ、寧々様ぁ」
と、悔しそうにさっきまでのことを話した。
話を聞き終えた寧々様はひと言、
「ほんっとうに馬鹿じゃないの」
と、はっきり言い放った。
「えっ」
と、固まる私達。
「情報を提示して尋ねたら、相手の思うツボだっつーの!」
「ど、どういうこと?」
と、息吹ちゃんは前のめりで尋ねる。
「いい?橋谷先生に確認したかったにしてもよ?市川さんと加瀬さんが会いに来ましたかって聞かないの!」
「え、だったら……どういう?」
「私だったら、『事件当日の朝、先生はどこで何をしていましたか?』って尋ねる。あんた達みたいにイエスかノーで答えられる質問をしたら、答える側は嘘だってつける。本当のことを隠せる」
私は驚いて、
「先生が嘘を言うってこと?」
と、目を丸くした。
(何のために?)