君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 心臓が破裂しそうな甘い痛みに堪えて、私は小さくかぶりを振った。

「でも今度は聡一朗さんが風邪をひかないか心配です。私のために無理をさせてごめんなさい」

 言われて初めて気付いたかのように聡一朗さんはあたりを見回し、立ち上がった。

「つい眠ってしまった。すまない、君の部屋で勝手に」
「い、いえそんな……!」

 まるで、勝手に人の部屋で眠り込んでしまったのを申し訳なく思うような様子だった。

 そんなこと思う必要ないのに。
 夫が妻の部屋に入ってはいけないなんて、あるはずがない。

 それとも……聡一朗さんは本当はこんなことしたくなかったのかしら……?

 私があまりに自己管理のできない子どもだったから見兼ねて看病してくれたけれど、仕事が立て込んでいて、実際はそれどころじゃなかったのかもしれない。
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