君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
『今夜は本当に大丈夫かい?』
『大丈夫です』

 何度目かの同じ問いに、元気なスタンプを付けて返す。

『体調は万全ですし、それに今夜のためにもう準備は整っているんです』

 とガッツポーズの絵文字を付けたし、

『お帰りの時にはもう準備を終わらせておきますね』

 なかば一方的に、別れのスタンプを送信した。

 ほう、と息を吐き、私は大きなスタンドミラーの前で「よし」と気合を入れた。

 今はお昼の十二時。
 今日は大学を休んだ。

 ランチは早めに軽く済ませて、顔のパックも今終わったところ。
 これから気合を入れて、お化粧を始める。

 ヘアサロンは十五時に予約したから、その前にメイクを終わらせて着替えて――。

 早くしなくては。今日が本番だ。


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