恋の毒



 翌日の放課後、私たちは約束通り、海に行くことになった。


 といっても、二人で学校を出て噂されるのは面倒だったから、私が先に海に着き、高城君を待っている状況。


 高城君が言っていたように、人はいない。


 防波堤にいても波の音だけが聞こえる、静かな空間。

 遠くから、街の音が聞こえてくるが、それも心地よい。


 でも、海だ。


 広大な海であること以外、なにも思わない。


「綺麗な景色でしょ?」


 遅れてやってきた高城君は、そのまま私の隣に立ち、海を眺める。


「……ええ」


 それ以上でもそれ以下でもないけれど。


『海には癒し効果があると思ってる』


 高城君はそんなことも言っていた。


 海をただ眺めている今、高城君は癒されているのだろうか。

 そもそも、海の力を借りなければならないほどのストレスを感じているのだろうか。


「鳴海さん、見るのは俺じゃないでしょ」


 私の視線に気付き、高城君は困ったように笑う。


「高城君がどんなストレスを溜めているのか、気になって」
「そんなもの、聞いてどうするの」


 小説のネタになるかもしれないと思った、なんてとてもではないが言えない。
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