恋の毒
『俺、鳴海さんのかっこいい考え方、好きだな』


 このままでは、高城君が好きだと言ってくれた私ではいられなくなる。


 それは嫌だった。

 高城君に『興味がなくなった』と言われてしまいそうで、怖くなった。


「鳴海さん、放課後一緒に、図書室で勉強しない?」
「しない」


 だから、仲良くなる前のときよりも、激しい拒絶をしてしまった。


 高城君が困惑しているのはわかっていたけれど、説明なんてできるわけがない。


 私は詳しく聞かれる前に、その場から逃げ出した。


 その日を境に、私は少しずつ、高城君と距離を置いた。


 上手に高城君から離れることができなくて、ひたすら高城君を困らせていたけれど、それでも私は頑なに、その理由を言わなかった。

 言いたくなかった。


 二学期が終わるころには、もう高城君が声をかけてくることすらなかった。


 私たちが過ごした静かな時間は、まるで幻だったのかもしれないと思うほどに、私たちは言葉を交わさなかった。


 自分がこの状況を作り上げたのに、あの時間を幻にはしたくなくて、私は久しぶりに、高城君に教えてもらった海に向かうことにした。


「いつか来ると思ってた」


 ただ海を眺めていたら、そんな声が聞こえてきた。
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