恋の毒
 高城君みたいな人だったら、きっと、もっと色の違うストーリーが描けるのかもしれない。

 それこそ、高城君が望むような、明るい話とか。


 そんなことを考えたからか、私は高城君のことを知りたくなっていた。


「可愛いっていうのは、鳴海さんみたいな子に使う言葉でしょ」


 妙な発言は嘲笑して聞き流し、さっきの質問の答えを待つ。


「静かな場所だっけ。そうだな……俺は、海かな。あと、水族館」


 似た系統の選択肢が挙げられた。


「好きね、海」


 でも、わからなくもない。

 水面に太陽の光が反射しているところや、静かな波の様子は、ずっと見ていられる。


「海には癒し効果があると思ってる」
「なにそれ」


 考えたこともない理由に、笑みが零れる。


 私はただ、なにをするわけでも、考えるわけでもなく眺めているだけ。

 そんなふうに考えながら、海を見たことなんてない。


 やっぱり、高城君と話していると、新しい価値観が得られて面白い。


「本当だって。今度行ってみてよ。秋に差し掛かってきて人も少ないだろうし、多分過ごしやすいから」
「高城君は行かないの?」
「へ?」


 聞いたことない、変な声。


 もう、高城君には笑わされてばかりだ。
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