虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで

一章


──この役立たずッ!

───捨てられたくないのなら働けば?

──あなたはいらない人間なのよ。本当、惨め


「……はい、シャルルお嬢様」


── ここにいられるだけ感謝なさい

───わたくし達に近付かないで頂戴

──顔を見せないで!早くどっかに行きなさいッ!


「はい、奥様……」


花瓶の水をひっくり返されたカトリーナの衣服は濡れそぼっていた。
廊下を汚してしまったことでまた怒られてしまうことになる。
あの二人の癇癪とカトリーナへの八つ当たりはいつものことだ。
周囲も当然のように見て見ぬふりをしている。
初めは悲しくて苦しくて息もできないほどだったのに、慣れてしまえば何も思わなくなる。
カトリーナは人形のように返事をして淡々と動くだけだ。

生まれてからずっとカトリーナはこの生活を繰り返している。

カトリーナはの母はサシャバル伯爵邸で働く侍女だった。
侍女達の中でも若く見目が美しかった母はある時、ひどく酔ったサシャバル伯爵に無理矢理関係を迫られた。
そして『カトリーナ』を孕み産んだのだ。

その事実を知ったサシャバル伯爵夫人は大激怒した。
何故ならばサシャバル伯爵夫人のお腹にも同時期に新しい命が宿っていたからだ。
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