虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで

三章



カトリーナがナルスティナ領で暮らしはじめて一ヶ月以上経つ。
最初は寝て食べてまた眠ってと、よくわからない生活を送っていた。
それなのに誰にも怒られることもなくニナには「たくさん食べましたね!」と何故か喜んでいる。

食べることが仕事だとクラレンスから指示を受けていたが、こんなに贅沢な生活をしていることが申し訳ないと思い「働きたい」と言ってもクラレンスは許可してはくれない。
まるで本で読んだお姫様のような生活に、目を覚ます度に何度も何度もカトリーナは思った。

(夢、じゃない……)

カトリーナはクラレンスの言いつけを守っていたが、部屋にあったワンピースに着替えるとフラフラとした足取りで部屋の外に出る。
着替えはこれしかなかったし、何よりこの寝間着はカトリーナが着ていた服よりもずっといいものだとわかった。
汚すわけにもいかずに、ここに来た際に着ていた草色のワンピースに着替えるしかなかった。

そして倒れる前にニナに案内された場所にある掃除用具を手に取ってサシャバル伯爵家より数倍冷たい水を汲んだ。
膝をついて床を拭いていると、ガラガラとワゴンの音が聞こえた後にパタパタと足音が近づいてくる。
そして「キャーー!」という甲高い悲鳴が屋敷に響き渡った。
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