交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
翌朝は早起きをして、母と作った朝食を父と3人で囲んだ。
もう準備万端、と整ったところでインターホンがなる。
一織さんだ。
「は〜い」
気を抜いたら宙に浮いてしまうんじゃないかってくらい上機嫌で玄関を開けると、昨日も会った彼がそこにいて思わず頬が緩む。
「一織さん、おはようございます! 来ていただいちゃってすみません」
「おはよう。気にするな。荷物、もう運べるか?」
「はい! やっぱりそんなに多くはならなかったので、車で十分いけそうです」
私の引越し作業は業者を頼もうと思ったけれど、一織さんが車を出してもいいと言ってくれたのでお願いした。
荷物は全部でダンボールが数箱で済んだので正解だったかも。玄関先で話していると、廊下の奥から父と母が出てきて一織さんを招き入れる。
靴を脱ぎ揃えた彼が、不意に顔を近づけ耳元で囁く。
「敬語。ご両親の前だし、意識して抜いてみて」
「そ、そうでした…じゃなくて、」
急接近は心臓によくない。耳を真っ赤にする私が口をぱくぱくさせていると、母がひょっこりと顔を出して叫ぶ。
「小梅〜、筑前煮持っていく? あと、田中さんの奥さんから頂いたりんごも持っていきなさい。お野菜もあったかしら」
「あ、うん! 持っていこうかな。 ……一織さん、なんだか荷物が増えそう、かも」
ちらりと彼を仰ぎみると、目を細めてふっと笑う。
「そうだな」
なんだか子ども扱いされている気がするけれど…一織さんの笑顔が見れたからまあいっか。
単純な私は、彼につられてへらりと笑う。
「小梅、ちょっと来て〜」
そこで母にもう一度呼ばれて、私は間延びした返事をしながら母のところへ顔を出すのだった。