交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~


引越し先は私の職場のクリニックと深山グループの本社からもほど近い高層マンションだ。
24時間常駐しているというコンシェルジュ付きのエントランスを前に、緊張で心臓がおかしくなりそう。

ホテルのラウンジと言われても納得するくらいには広いロビーは、住人が自由に使えるフリースペースに自動販売機、コンビニまで備わっている。

荷物はコンシェルジュによって部屋の前まで運ばれるらしく、その手続きを一織さんがしてくれている間、私はふかふかのソファにちょこんと座って待っている。
こんな凄いところに、私は住めるんだろうか…。
的はずれな心配が出てきたところで一織さんが戻ってきた。

「そんなに身構えることない。これからはここに、小梅も帰ってくるんだから」

端っこにいた私を少しだけ眉を下げて見下ろす。

「ホテルみたいに綺麗だから、つい…私が住むなんて信じられないです」

苦笑いで素直にそう言うと、一織さんが少し思案して、それから私の手をとる。
くいっと引っ張られ、そのまま手を繋ぐ私たち。

「そのうち慣れるよ」

くすっと笑って歩き出す彼の背を追う。それは、マンションのことなのか、それとも……

手のひらから伝わる彼の温もりが、つま先から頬までを熱で包む。

一緒に暮らし始めるのだし、夫婦になるんだからこれくらいの接触でオーバーヒートしていてどうする、とは思うけれど。

どうか、どうかお手柔らかにお願いしたい。
どこを取っても初心者の私に、一織さんと夫婦としての生活は、少々刺激が強めの毎日になりそうだ。

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