愛されていたとは知りませんでした。孤独なシンデレラは婚約破棄したはずの御曹司に秘密のベビーごと溺愛される
「ぱっぱ。バイバイ!」

歩那が手を振って見送る。
扉が閉まるまで花蓮も手を振り、自分の仕度にかかる。

今日は月一度の棚卸しの日で、店は休みだ。
出勤ではあるが、花蓮は午後からなので余裕があった。

ゆっくり散歩をしながら保育園へ行けそうだ。
心配性な昴はタクシーを使うように行っていたが、天気も良いし久しぶりに歩くのも良いだろう。

歩那と食事をとり、ゆっくり仕度できたところで、ダイニングテーブルに封筒が置きっぱなしなのに気がついた。

「あれ? これって……」

昨夜、昴が確認していたL×Oの店舗資料ではないだろうか。
ちらっと中身を確認すると、今日必要なのではないかと思える書類がいくつかある。

慌てて昴に連絡を入れ暫く待つが、既読にならない。

「プライベート携帯なんか見る暇ないよね」

電車で往復なんてだいぶ遠回りだが、幸運にも時間はあった。

「歩那、ママと電車に乗ろっか!」

「ぶーぶ!」

「違うよ。ガタンゴトン」

「ごーご?」

「そ。ガタンゴトンだよ。パパにお届けものしよう……あっ」

自然に昴をパパと呼んだ自分にびっくりする。
いったい、いつのまに歩那目線だとパパ呼びになったのだろう。

そんな自分に、顔が綻んだ。
本当に、このまま幸せだけが待っている気がして。

「ぱっぱ!」

「うん。パパに会いに行こう」

保育園と仕事に行けるように準備を終え、書類を鞄にしまうと、今から届けに行くとメッセージを残して家を出た。
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