愛されていたとは知りませんでした。孤独なシンデレラは婚約破棄したはずの御曹司に秘密のベビーごと溺愛される
勲を観察していると、多少手を焼いているようにも感じる。遠慮しているような、何か、彼女に対して後ろめたいことがあるのだろうか。

(うまく暴走を止める側に回ってくれればいいのだが……)

「何? やっぱりあなたも花蓮の味方だっていうの?」

「そんなことは言ってないだろう」

勲が慌てる。
怒りの矛先が勲に向き、それを見守る。

「そうよね! あなたは理解あるフリをしているけれど、結局はわたしより葉子を愛しているものね」

「な、なにを……」

狼狽える勲に、香は畳かける。

ヒステリーを起こしているせいか論点がずれて唖然とするが、昴は傍観することにした。
勲までなぜ花蓮を虐げるのか理由がわかる気がした。

「会社の為にわたしを捨てて葉子と結婚して、死別したからっておめおめと戻ってきたじゃない。葉子とは家の為に仕方なくって言ってたくせに、蓋をあけたらいつのまにか葉子にも情があったですって?! よくもそんなことが言えたわ」

「香、やめないか」

勲が手を伸ばすが、香は振り払う。

「いいえ、やめないわ。あなたは寂しかったからって、わたしを都合良く利用したのよ。あなたも葉子も、その子供も許さないわ! 勲さんがわたしを裏切ったら、早間なんて潰してやるんだから。会社が大事なら花蓮のことなど庇わないことね。安心して、わたしの言いうこと聞いてくれていたら、早間はわたしの息子が引き継いであげるわ」
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