ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
あれから三週間が過ぎていた。
夢だったのかと思えるほど、それからなにも起こらず今日まで至る。

自分でもう会いに来るなと拒否をしておいて、一方でまた会えるのではないかとそわそわしていた。

これでいいんだと言い聞かせているのに、落ち込む気持ちを切り替えできずにいる。

「花蓮ちゃん危ないっ!」

「えっ?」

悲鳴を聞いて色めいた記憶からはっと意識を戻すと、目の前の棚から、積んでいた米の袋がなだれ落ちてきた。

「わ……!」

積み方が甘かったらしい。
コツがあるから注意するように言われていたのに、気もそぞろで働いていたせいか、まったくできていなかった。

花蓮は咄嗟に米袋に向かって手を伸ばす。
袋に穴が開いたら大変だ。

「きゃあ!」

10キロある袋を3つばかり受け止めると、ドサドサっと大きな音と共に尻もちをついた。

お腹を殴られたような衝撃があり、尾てい骨を打つ。床についた手首に痺れるような痛みが響いた。

「花蓮ちゃん大丈夫?!」

周囲にいたおばさん達が顔を青くした。

ちょうどバックヤードに入ってきた山根が、驚いた顔ですっ飛んでくるのが見えた。

「い、いたた。わたしは大丈夫です。それよりもお米……!」

花蓮は慌てて商品の状態を確かめた。
表と裏と左右から確認する。

「はぁー、よかった……無事みたい」

ひやっとしたが、商品は無事だった。
包装が傷んでいる様子はない。バックヤードだったので、客にミスを見られなかったことにもほっとする。

「どこも痛くない?」

駆けつけた人たちがお腹の上の米を退かしてくれる。起ち上がると、花蓮は深々とお辞儀をした。

「ええ、商品はなんとか。落としたお米は買い取ります。お騒がせして申し訳ありません。気を引き締めます」

(10キロを3袋か……突然の出費は痛いけれど、腐る物ではないから先行投資だと思おう。一度には無力だから、一袋ずつ持ち帰らせてもらって……)

やってしまったと落ちこんで頭を垂れながら考えていると、山根の大きな声がとんできた。
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