ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
「なんだあの男は。まさか、あんな奴が花蓮の結婚相手なのか?」

信じられないと行った顔に、花蓮は慌てて否定する。

「ち、違います……隣に住んでいる人で、初めて話しましたっ」

冗談でも嫌だった。
別れてはいるが、花蓮が思い続けているのは昴だけだ。

ほかの男なんてとんでもない。

「そうか……被害があるなら届けを出すか……?」

(被害届……)

タイミングよく現れてくれた昴のおかげで何事も無かったとはいえ、あのまま部屋に連れ込まれていたら何をされていたか。

金で買うという意味がどういう事か、わからないわけではない。
最悪の結果を想像し、ぶるっと体を震わせた。

男とは二度と会いたくないが、簡単には引っ越せない。
金目のものは香にむしり取られてしまって、僅かな貯蓄を切り崩して生活している。すぐに引っ越しが出来るほど余裕はない。

それならば被害届を出しておいた方がいい?
でも、恨まれたりしたらどうしよう……。

自分だけならまだいい。歩那になにかされたら――……。

「んばぁ! だー!」

歩那の声で我に返る。

お腹が限界なのか、ぎゃんぎゃんと泣き始めてしまい、背中をさすって宥めた。

「よしよし、ごめんね。そうだ、お夕飯作らないと……」

現実に引き戻され、洗濯物、料理、明日の保育園の準備と次々にやらなくてはいけないことが浮かんだ。

倒れていたベビーカーに手を伸ばすと、手首に強烈な痛みが走った。
持ち上げかけたベビーカーをまたがしゃんと地面に落としてしまう。

「う……」

手を抑え、痛みをやり過ごす。

その間に、歩那の声はどんどん大きくなった。
泣き声が頭に響き、焦ってパニックになる。

「まってね、すぐに……」

とりあえずもう一枚せんべいを与えておこうと思いバッグを探ろうとしたら、今度はバッグの中身をぶちまけた。
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