ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
「ああっ……」

痛いし恥ずかしい情けないしで涙目になる。

「大丈夫、落ち着いて」

昴が花蓮の頭に手を置いた。次に歩那の鼻先を撫でる。

「えーと、あゆな? そんなに泣くな。顔が真っ赤だぞ。ママは今ちょっと大変なんだ。ちょっとだけ待っててくれな」

ぎゃんぎゃんと泣く歩那に微笑む。
その笑みは、自分に向けられたものではないのにどきりとした。

「これ、あげておくと落ち着く?」

「は、はい……」

昴は花蓮のバックから飛びだしていたせんべいを取ると、歩那に持たせ落ち着かせた。

そして落ちた荷物をてきぱきとまとめ、次にベビーカーを起こす。

買い物袋から漏れた卵の液もさっと処理をし、玄関を開けて荷物を入れてくれる。
ずっとひとりきりでやってきたから、誰かの助けがあるという状況に感動している自分がいた。

男から助けてもらってほっとしたのもあったのか、急に目頭が熱くなって、あっというまに涙が溢れた。

昴は目を真っ赤にする花蓮をみると、また頭を撫でた。
そして「大丈夫」と呟く。

なんの根拠もない言葉が、全身を包み込んでくれるようだ。

「部屋にあがらせてもらっても? 手当をしよう」

昴は花蓮からほろほろと零れる水滴をハンカチで拭うと、腫れた腕を見て痛ましそうにした。

花蓮はこくりと頷いた。

関わらないでほしいと拒絶すべきなのに、もう少しだけ甘えたいと思ってしまったのだ。


ーーーー今だけだから。
充電したら、またがんばるから。
もう少しだけ声を聞いて、温もりを感じていたい。
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