ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
目が合ってしまった花蓮は、獲物を狙うような目に体を小さくした。
なんとか帰って貰う方向に話をもっていかなければ。

“夫“の帰宅まで部屋に居てくれるつもりらしい。
隣の男は怖いけれど、昴にずっと嘘をつくのも辛い。

「もうすぐ帰ってくると思います! なのでそろそろ……」

「そうか、男の生活感がまったくないようだが」

昴はゆっくりと部屋を見回した。
狭い部屋からは洗面もすぐに見えた。コップに刺さった歯ブラシは1本だけ。
その他にも服や靴が見当たらないことを鋭く指摘された。

「早間の家の力なのか、調べても調べても花蓮の状況がわからない。しかし、ひとつだけわかったことがある。君は籍を入れていないんじゃないのか?」

花蓮はぎくりとした。

「そ、それ、は。えっと……あの」

背中に汗が伝う。
なんて言えばいいんだろう。

あらゆる言い訳が頭のなかを駆け廻ったが、すぐに観念をした。
深く息をついてから白状する。

「ごめんなさい。結婚はしてなくて、そのうち帰ってくるなんて嘘です。ここは歩那とわたしだけで暮らしています……」

結婚をせず子どもがいることについて、どう感じるだろう。
自立出来ていないと思われるのは悔しい。
それに、嘘つきだと軽蔑されるのも悲しい。

(ああでも、もう二度と会わないのであれば、なんと思われようと関係ないのかも)

一瞬でいろんな感情が駆け巡る。
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