ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
すると、「そうか!」とやけに明るく降ってきた声に花蓮はぽかんとした。

「え?」

顔を上げると、昴は咳払いをして誤魔化した。

「あ、いや、そ、そうか……やはりな。それは大変だったな。ふたりきりなのはわかったが……両親からの援助はないのか?」

「事情がありまして、早間の家とは縁を切りました。わたしも歩那も、早間とは関係ないんです」

「助けて貰えないということか」

「ええ。なので、昴さんも、もうわたしに構わなくて大丈夫なんですよ」

昴ももう、なんの関係もないのだから。
少々、言い方が自虐的になってしまったかも。
悲愴に聞こえないように笑って誤魔化した。
そんな気持ちの花蓮とは裏腹に、昴は張り切った。

「そうとわかったら、すぐにこの部屋を出よう。歩那に必要な荷物はどれだ? 大きなバッグはある? 急いでまとめよう」

昴は言った傍から立ち上がり、おむつやおもちゃを集め出した。

「え?」

「このまま、ここで暮らすわけにはいかないだろ。隣にとつぜん襲ってくるような男が住んでいるんだぞ。いきなり部屋に乗り込んできたらどうする。被害届を出して、逆恨みされたらどうする。女と幼子ふたりきりなんて危険すぎる」

「それは、そうですけど……でも、どこへいくんですか? 頼る相手もいないし、今すぐに引っ越できるお金はわたしにはありません」

「俺のマンションへ。それならお金の心配はいらないだろ? 部屋は余っているから遠慮はするな。花蓮はそのままでいい。マンションについたら身の回りの物は用意させよう。さあ、急いで」

(昴さんのマンション⁉)

「む、無理ですそんな……」

昴と関わることは早間との約束を破ることになる。

それに昴の家にお邪魔するなど、申し訳ないのももちろんだが、なにより心臓が持たない。

(付き合っている時でさえ、実家に年に一度お邪魔する程度だったのに!)
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