鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 ちなみに、マリアベルの発言に深い意味はない。
 まあ、幼馴染が自分とお揃いにしたことを喜んでいる時点で、彼のことを嫌ってはいないし、「好き」ではあるのだが。
 彼に対して抱く「好き」の種類を、マリアベル自身もよくわかっていない。

「べ、ベル。それって、どういう……」

 お揃いが嬉しいって、つまりそういうことでは?
 もしかして、好意……を少しは抱いてくれている!?
 てれてれのアーロンが、マリアベルの意図を聞き出そうとしたとき。

 ととと、と一人の女の子が近づいてきた。
 アーロンとミゲルという公爵家の人間同士が話し始めたため、ちょっとだけ静かになったこのタイミングを狙い、彼女はやってきたのだ。

「あ、あの……。マリアベル様、ですよね」
「え、ええ!」

 髪も瞳もピンクの、可愛らしいお嬢さん。
 小柄で、控えめな雰囲気で。男であれば、彼女を守りたい、と思ってしまうことだろう。
 彼女はマリアベルと同じく、学院の制服に身を包んでいる。

「おお、コレットちゃん! こちら、きみと同じ魔法特待の、マリアベル・マニフィカ伯爵令嬢だよ! やっと連れてこれたんだ! アーロンのやつにずっと邪魔されててねえ~」

 もっと早く声をかけたかったのにさあ、と愚痴を言うミゲルを、アーロンがどついた。
 マリアベルのことが大好きなくせに、お昼休みもずーっと一緒! ではなかったアーロン。
 実は、ミゲルがマリアベルの元へ向かおうとするのを食い止めていたのである。
 今日、ついに折れてミゲルにマリアベルを紹介したのだった。

「コレット・コルケットと申します。その……同じ魔法特待生だと聞いて、ずっとお話したいと思っていたのですが、なかなか勇気が出なくて……」

 口に手をあて、もじもじとするコレットは、同性の目から見てもたいそう愛らしかった。

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