鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
――アーロン様に振り向いてもらえるよう、これから頑張るのよ!

 そんなふうに、思っていた。
 だが、あるとき。クラリスは、知ることになる。
 アーロンは、社交の場にすら出てこれない、貧乏伯爵家の娘にご執心であることを。

「マリアベル・マニフィカ……」

 領地に引きこもり、魔物退治を続ける暴力女。
 身なりにも社交にも興味がなく、魔法の修業ばかりしている。
 魔物の血に濡れた状態で町を歩き、その姿で貴族の男子の前にまで姿を現すとかいう、意味のわからない人。
 いつしかついた二つ名は「鮮血のマリアベル」……って、伯爵家の娘にそれはどう考えてもおかしい。
 これからの縁を見据えて令息に会う機会があっても、全て破談。
 一応は由緒正しい伯爵家の娘のはずなのに、どうしたらそんなことになるのだろうか。
 そんなおかしな女の元に、アーロンは熱心に通っているという噂だ。
 アーロンはマリアベルのことが好きなのだろうと、話す者もいた。

 なんで。なんでなんで! そんな野蛮な女より、私のほうがアーロン様にふさわしいはずなのに!

 マリアベルの件を知ったクラリスは、嫉妬の炎に燃えた。
 アーロンは誰に対しても平等で、特別扱いはしない。
 だからまだ自分にもチャンスがあると思えたし、どうせみな同じなのだから、と過剰に焦らずにいられた。
 しかし、だ。アーロンには既に、特別な人がいたのだ。
 その相手が、貴族の子供同士の集まりなどに顔を出さない人だったから、知らずにいられただけ。
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