炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

 氷像の狼は、ミーシャが考えているあいだにもグレシャー帝国兵を川へ落とし、噛みつき暴れ回っている。兵が狼に打撃を加え氷の身体が欠けても、すぐに復元してしまうのだ。

「助けなくちゃ」

 ミーシャは炎の鳥を、氷像の狼に向けて放った。

 三体はあっという間に炎に飲み込まれ、魔鉱石を残してどろりと溶けてしまった。そのままミーシャは青色の魔鉱石を燃やし続け、長く加熱したあとすぐに冷たい雪を上からかけた。魔鉱石はいくつもの亀裂(クラック)が入り、その輝きを失った。

「これでたぶん、大丈夫」
「あんた、さっきの女か?」

 声をかけてきたのは、さきほどミーシャに近づいてきた中年の隊長だった。

「もしかして、魔女……なのか?」

 警戒しながら訊かれ、ミーシャは一瞬自分の正体を打ち明けても大丈夫だろうかと、不安が過ぎった。

 魔女は畏れ、嫌われている。それでも今は彼らに自分を認めてもらうしかない。
 立ちあがると、ほほえみを浮かべてから兵士たちを見た。

「私は、炎を操る魔女です。みなさんを手伝いに来ました」
「手伝う、とは?」
「先ほどみたいに、氷像の狼なら私が倒せます。凍り漬けになったカルディア兵を流氷から出すのを手伝います」

 兵たちは、困惑しながらお互いの顔を見合った。

「炎の魔女ということは、あんたもしかして、皇帝陛下の……寵姫?」

 陛下の寵姫と言う言葉に、ミーシャの顔が一気に熱くなった。

「へ、陛下の寵愛を、もっといただけるようにがんばります!」

 焦ったミーシャは変なことを口走ってしまい、さらに熱くなった。雪を頭から被って、身体を冷まそうかと思っていると、

「魔女さん、危ない!」

 反応が遅れた。兵士の視線を辿るように振りかえると、さっきより大きな氷像の狼が一匹飛び上がり、ミーシャに向かって襲いかかってきた。

 ――避けきれない!

 噛まれる覚悟していると、いきなり目の前に銀色の甲冑姿の騎士が現れた。
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