元皇女なのはヒミツです!


 私は公爵令嬢の心の原動を知っている。
 フレデリック様の手紙によると、彼女は幼い頃に母親を病気で亡くしたらしい。その傷が彼女の心に暗い影をもたらせているのだ。きっと周囲も彼女が不憫だと思って無責任に甘やかせたのもあるのだろう。幼い少女の純粋な心は寂しさと悲しさとやるせなさで、すっかり歪んでしまったのだ。
 彼女が一番欲しいものは母親の愛。だけど、それを与えられる者はこの世には存在しない。だから、その代わりとなる他者からの愛情を求めて、過激な行動を起こして周りの者を試しているのだ。誰が母親と同じ愛を自分にくれるのか、と。

 でも、うんと小さい頃ならまだしも、ずっとこのままではいけないわ。
 少女はやがて大人になる。そのときになっても、びーびー泣いて駄々をこねるようでは貴族社会では生きていけない。最悪は親族も巻き込んでギロチン行きだ。だから、どこかで折り合いを付けて過去とは決別をしなければならないのだ。それがどんなに辛くとも。
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