元皇女なのはヒミツです!
フレデリックはくすりと笑いながら彼女の頭をポンと撫でて、
「じゃあ、この話はもう終わり。いいかい? リナ先生の次の授業もちゃんと受けるんだよ?」
「……分かってるわよ」と、アメリアは口を尖らせて、そっぽを向いた。
フレデリックはその様子を微笑ましいと思った。
従妹は幼い頃に母親を亡くして、随分悲しい思いをさせてしまった。だから、なるべく彼女の側にいたいし、彼女の望みもできるだけ叶えてやりたかった。
だが、可愛さのあまり、それが彼女を悪い方向に導いてしまっているとは思ってもみなかった。それに気付いた頃には手遅れに近く、今では娘の教育に叔父上も頭を抱えているところだった。
そこにリナ嬢が現れたことは僥倖だった。彼女はたった一回の授業で従妹の魔法を向上させた。これは良い変化が訪れるかもしれない。そう考えると心が弾んだ。
同時に、フレデリックはこの奇妙な特待生の平民に大きな興味を抱いた。
婚約者と同じアレクサンドル人の女の子。やはり彼女と同郷だからかどうしても気になってしまう。もしかすると、エカチェリーナが恋しすぎて自分は頭がおかしくなってしまったのかもしれない。
だが……もっとリナと話してみたいと、フレデリックは思った。