元皇女なのはヒミツです!

 こうしている間も、令嬢たちは容赦なく私にテーブル上のものを押し付けてきた。一度他の場所に置きたいが、のべつ幕なしに渡されてそんな暇はなく私の腕の中にどんどん食器類が溜まっていった。

 にわかに、誰に背中を押された。
 そして、

 ――ガッシャーン!

 私はつんのめって派手な金属音を響かせながら食器類を粉々に割ってしまった。ガラスの破片がドレスに飛び散った。
 令嬢たちのくすくすと意地の悪い笑い声を全身に浴びる。だが、私はその悪意さえも届かずにただ茫然自失と目の前の惨状を眺めていた。
 ……これ、全部でいくらかしら?
 眼前の破損した品は全部が高級品だ。両家で禍根を残さないためにも、きっとシェフィールド家が弁償することになるだろう。仮に私のお給金から天引きするとしても、それだけで賄えるだろうか。アレクセイさんから受け取った元税金を使う? いや、それはさすがに良心が……。


 そのとき、私の意識を現実に引き戻すかのように、一人の令嬢が卒然と大声を上げた。

「どうしましょう! あたしのネックレスがないわ!」

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