元皇女なのはヒミツです!
「そ……そのようなことが…………」
公爵令息は二の句が継げないようで、青い顔をしてただ黙って私を見つめていた。
「ですから、私は平民として生きていくつもりですので、あなたも私のことを平民として接していただきたいのです。そして、このことは絶対に外部に漏らさないこと。もちろん、あなたのお父上のストロガノフ卿にもです。よろしくて? でなければ……」
「でなければ……?」
「あなたの心の臓に氷の刃を突き刺して、そこから血管を通って全身を凍らせて最後は――」
「わっ、分かりました! こ、このセルゲイ、命に替えても秘し隠します!」
「あら、ありがとう。さすが建国時からの忠臣ストロガノフ家の令息ね。では、もう一つお願いをしても?」
「どうぞ、なんなりと」
「私とお友達になってくださる?」
「へっ!?」
公爵令息は素っ頓狂な声を上げて目を丸くする。
「ほら、私、異国の地に一人で来て頼れる相手もいないでしょう? 同じアレクサンドル人のあなたが懇意にしてくださるととっても助かるのだけど」
「も、もちろんです!」公爵令息は笑顔を向けた。「そのようなことでしたら、喜んで」
「ありがとう。では、これからは私のことはリナと呼んでくださいね。私もセルゲイと呼んでいいかしら?」
「御意」
「そう。では、その敬語もおやめなさい。私は平民のリナ、あなたは名門貴族の令息なのですよ? ――じゃ、ここからは平民として喋るわね、セルゲイ?」
「わ……分かりまし――分かったよ、リ……リナ……」
こうして、リーズ王国で初めての友人ができた。
ま、過去の権力を振りかざして半ば強引にお友達になってもらったのは否めないけどね。