元皇女なのはヒミツです!

 しばらく失意の日々を送っていたが、あるとき、彼女に関する妙な噂を側近から聞いた。
 全員が死亡したと発表された皇族一家だが、なぜか皇女の死体だけは誰も確認していないらしい。
 だから、もしかすると皇女はどこかで生き延びているのではないか、と……。

 天地を揺るがすような衝撃が襲った。
 エカチェリーナは、生きている。
 そのことだけが瞬く間に僕の心を支配した。

 彼女を、探し出そう。

 そう、誓った。




◇◇◇



 親愛なるエカチェリーナ様

 あなたは今、どこで、なにをされているのでしょうか。
 僕はあなたに会いに、ついにアレクサンドル連邦国に足を踏み入れました。
 あなたの言う通り、初春の雪解けのドロドロの道を行くには骨を折りました。でも、まだ残る真っ白な雪と新緑のコントラストがとても幻想的で、朝日に光るその景色に心奪われました。
 いつか、あなたと二人でこの道を歩けたらと思います。

 ………………
 ………………



◇◇◇




 僕は今でもエカチェリーナに手紙を書き続けている。いつか彼女と出会えたときに渡すためだ。
 彼女は僕の気持ちが重いと苦笑いするかもしれないが、自分の真剣な想いを知って欲しかった。

 エカチェリーナと巡り会えた日には、これまでの互いの手紙の感想を述べながらゆっくりとお茶でもしたいなと思う。
 彼女の作ったスミレの砂糖漬けを食べながら。

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