元皇女なのはヒミツです!

11 平民の憂鬱

「どきなさいよ! この平民!」

 私が廊下を歩いていると、出し抜けにグレースたちが背後から激しくぶつかって来た。思わずバランスを崩してつんのめる。教科書やノートがばらばらと床に散乱した。

「いたたた……」

「リナ、大丈夫!?」慌ててオリヴィアが駆け寄って、私を起こしてくれた。「怪我はない?」

「うん、大丈夫。ちょっと擦りむいただけだから」と、私は散らばった荷物を集める。

「平民のくせに廊下の真ん中を歩いているからよ! いいこと? 卑しい身分の者は誰にも迷惑を掛けないように隅を歩きなさい! 這うようにね!」

 グレースがくすりと笑って、

「そこの平民上がりもよ!」

 オリヴィアに向かってビシリと指を差す。途端にオリヴィアがビクリと肩を震わせて涙目になった。
 私はこの理不尽な仕打ちにむかむかと腹が立って、おもむろに立ち上がりグレースをきっと睨み付ける。
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