たとえ君の記憶がなくなっても。
学校を出ても、私たちの間に会話はなかった。
静かに時だけが刻まれていく。
「俺の家ここ」
ユイトくんの言葉に顔を上げる。
目の前の景色に思わず目を疑った。
ユイトくんがここだと指差す家の、道路を挟んで向かい側、正面にあるのは私の家だった。
「ここの正面の家、私のお家」
「知ってるよ。毎朝迎えに行ってたじゃん」
「そっか」
そこでふと疑問を抱いた。
私、ユイトくんに家の場所なんて教えたことあった?
記憶を辿るが全く思い出せない。
私はユイトくんと仮交際が始まるまで、学校に家に招待したり一緒に帰ったりする友達はいなかった。
だから誰かから聞いたというのも考えにくいだろう。