殺意のピアス
  ***


翌日。



夜の6時になっても帰ってこない裕太を放って、先に豪華夕食を一人で食べてやった。

7時になっても帰ってこないあいつを放って、先にお風呂に入ってやった。しかもいつもより豪華な『お疲れなあなたに』と書かれた入浴剤も入れてやった。

8時になっても帰ってこないバカを放って、小さなアイスクリームケーキも一人で食べてやった。上に乗ってるチョコレートプレートも食べてやった。

9時になっても帰ってこないクソッたれを放って、先に寝てやる。
リビングの電気も消したし、玄関の電気のセンサーも切ってやった。


10時になっても帰ってこないもうどうでもいい男は捨ててしまおう。



私は片方だけになってしまったピアスを見つめた。


ピアスを落とした時点で、私は期待していたんだ。
本当にただのソロキャンプだと思いたかったんだ。
ナナさんとはもう会っていないと確信を持ちたかったんだ。




溢れてくる涙でピアスが見えない。

手の甲から腕までこすりつけて涙を打ち消す。

擦っても擦っても、絞る様に出てくる涙は熱く、胸が苦しい。


掌の上で輝くピアスをぎゅっと握りしめ、殺意を込めた。




帰ってきなさいよ・・・・。
帰ってきてよ・・・・・。
帰ってこないなら・・・・

「・・・もう帰ってこないで」




時計の針の音だけが、室内に響き続けた。








          終










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