その甘さに、くらくら。
「もう弓木の血液しか、受け付けない」

 飴が、溶ける。ゆっくりと、溶ける。次第に思考が滞っていく。髪と髪の間に手を入れ、俺の頭を支える五月女は、そうして俺の首筋を晒けさせた。呼吸が近い。首が熱い。洗脳されているようなふわふわとした感覚が俺の脳を鈍らせる。五月女の髪が頬を撫で、五月女の歯が皮膚を噛み、五月女の牙が、首筋に刺さった。

 ちくりとした痛みが走る。その僅かな痛みが、堕ちかけた俺を引き上げる。そして、我に帰る。我に帰って、五月女を押し退ける。その、はずだった。その、はずだったのに。

 だんだんと頭が熱くなる。だんだんと体が熱くなる。だんだんと息が熱くなる。目が回る。血が巡る。ぐるぐる。ぐらぐら。くらくら。血と一緒に、意識まで持っていかれそうだった。発情した五月女に噛まれた、あの時のように。

 何年も、ゲロの味に変化した血しか飲んでこなかった、それしか飲む他なかった五月女が、まるで口直しをするように俺の血をごくごくとがぶ飲みする。噛もうと思えば、いつだって噛めた。それでも五月女は、そうしなかった。噛めば自身が暴走するから、我慢してくれていたのだろうか、などと都合の良い解釈をする。

 俺の血液が、五月女の飢えを満たし、五月女の唾液が、俺を発情させる。これまで飲めなかった分を取り戻すような勢いで、五月女は喉を鳴らす。

 呼吸をするのすら忘れてしまうほど夢中になっていたのか、ようやっと唇を離した時には、五月女の息は乱れていた。
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