マイシス××。
「コハル様、いらっしゃいますか?」
淡々と続けられる落ち着いた声のトーンは、車を運転してくれた川田さんのものだとすぐに分かった。
私の手首を掴むシグレの手も緩んでくれたから、安堵の息が僅かに漏れる。
「な、んだよ?滅茶苦茶取り込み中なんだけど!」
なんて、シグレが扉の向こう側に叫べば、
「コハル様がこちらにいらしていると聞いて」
「あー、いるぜ」
そうシグレが返せば、その部屋の扉がギィと音を立てて開けられる。
「でもコイツ、自分から俺の部屋に来たんだからな」
"ちょっと脅かしただけだぜ"なんてシグレは悪びれも無くドアの方に顔を向けた。
「旦那様に叱られますよ」
「そんなのいちいち報告するんじゃねーよ!」
「義務ですから」
「義務ぅ?あーやだやだ、大人気《おとなげ》ねぇな」
「シグレ様の方が大人気無いと思いますが」
「うっせぇなぁ!」
2人がそんなやり取りをしている間に上半身を起こして、唇をギュッと噛み締めながら、解放された震える腕を両手で掴んだ。