『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「和沙に美味しいカレー屋さん教わったんだけど、行ってみる?」
「いいっすね」

璃子さんとエレベーターで一階へと降りながら、お店を決める。
仕事オンモードの璃子さんとは違う、ちょっとあどけない彼女が可愛く映る。

ロビーからエントランスへと出た、その時。

「悠真っ!」
「……え」
「……さっきの子だね」
「……ん」
「いいよ、私は。……お疲れ様でした」
「え、あっ、ちょっと、璃子さんっ!」

ペコリと会釈した璃子さんは、振り返りもせずに駅の方へと歩いて行ってしまった。

「何なの、お前」
「ご飯食べに行こ―よ」
「さっき断っただろ」
「私は了承してないよ」
「知らねーよ」

また悪い病気が発病してるっぽい。
杏奈はストーカー気質っていうか、自己中すぎて、周りの空気が全く読めない奴。
誰もが自分に好意を寄せてると勘違いしてるから、声をかけたら断られることはないと思い込んでる。

“重い”なんて言葉じゃ言い表せないくらい、一緒にいることが苦痛で。
見た目の容姿と断るのが面倒という理由で付き合い始めたあの頃が、人生で一番後悔してる。

「悠真の彼女ってどんな人?」
「お前に教えるわけねーだろ」
「えーいいじゃん」
「ついてくんな」
「駅前のイタリアン食べたーい」
「勝手に食って来い」
「一人じゃ入れないよ~」
「じゃあ、他当たって」
「悠真がいいんだよ~」
「俺はお前と食う気はねー」
「お寿司でもいいよ~?」
「しつけーよ」
「じゃあ、中華っ!」
「お前、日本語教室通え」

会話するのも怠い。
璃子さんとのカレー屋さんデートが消滅して、マジでへこむ。
というより、コイツが今ここにいること自体、怖すぎる。

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