『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました
数日後。
「白井さん、ちょっといいかしら?」
「はい」
浅沼部長に呼ばれて、部長室へと。
「新規の依頼なんだけどね。先方が、担当者に白井さんを指名して来たんだけど、面識があるのかと思って」
「……何という会社ですか?」
「森野商事」
「……私は存じ上げません」
「そう」
「どこかの会社からの紹介でしょうか?」
「分からないけど、そうかも知れないわね」
部長から手渡された書類には、ご依頼主の会社情報が記されている。
けれど、何度見返して接点が見つからなかった。
「明日の午後一時に、先方が打ち合わせしたいと言って来てるんだけど、どうかしら?」
「明日でしたら大丈夫です」
「それじゃあ、後のことは任せるわ」
「はい、承知しました」
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翌日の午後一時、五分前。
新規依頼の森野商事の本社へと。
十階にあるミーティングルームへと通され、担当者が来るのを待っていると。
「お待たせしました」
女性の声がして慌てて席を立った、その時。
「ッ?!!!」
「森野商事の森野 杏奈と申します」
「……初めまして、HASUMI FOODの白井 璃子と申します。この度は弊社にご依頼頂きまして、誠に有難うございます」
差し出された名刺には『広報部長 森野 杏奈』と記されている。
会社の前で、八神くんを待ち伏せしていた元カノだ。
「どうぞ、お掛けになって下さい」
「失礼致します」
名刺交換をして、腰を下ろす。
言葉では好意的な態度を示しているかのように思えるが、目の前にいる彼女の視線はそれとは違う。