若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 なにも言えないまま老婦人を見送ったジョンズワート。ハッとしてショーンの状態を確認するが、外傷などはなく。
 本人から話を聞いても、本当にここで保護されていただけのようだった。
 安堵からはあーと盛大に息を吐き、ショーンをぎゅっと抱きしめた。

「よかった……。本当に、よかった……」

 ジョンズワートの声は、少し、震えている。
 実の父の、心からの言葉と温もり。なにか感じるものがあるのか、ショーンも黙って「父」に身を委ねた。



 そのうち、2つのカップを用意した老婦人が二人の元へ戻ってくる。
 お父さんも飲んでね、と言ってから1つはテーブルの上へ。もう1つは自分用のようで、それを持ったまま椅子に腰かけた。
 ぎゅっとくっつくショーンとジョンズワート見ながらカップに口をつけ、老婦人はのんびりと話し始める。

「昔は旦那も子供もいたんだけどねえ。この年だから、子供は独り立ちして、旦那も他界しちゃって。一人だから、警察に届けるのも後になっちゃったわ。ごめんなさいね」
「いえ。この子を保護していただいたこと、感謝しております」
「そういえば、うちにいるってよくわかったわねえ」
「息子を探していると話したら、町の人が教えてくださったもので」
「そうだったの。確かに、親子でこれだけ似ていたらわかりやすいわあ」

 一目でわかったもの、と婦人は続ける。それから、お父さんもお飲みなさい、とも。
 カレンたちを外で待たせている中、申し訳ない気持ちもあるが……。
 息子を保護してくれた人の厚意を無下にはできないし、ジョンズワートが冷えているのも確かだったから、用意された飲み物はありがたくいただいた。

 それぞれに用意された分を飲み終わる頃には、ショーンもずいぶん落ち着いていた。
 これ以上カレンたちを心配させるわけにもいかないし、ショーンももう大丈夫そうだったから、そろそろお暇することとした。
 玄関先にて、老婦人は幼子とその父を笑顔で見送る。
 
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