若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「お父さんが来てくれてよかったわねえ、ショーンちゃん」
「うん……」

 カップをテーブルに置くと、老婦人はショーンの頭を撫でる。
 ここまでのやりとりで、ショーンも少し落ち着いたようだ。まだ泣いてはいるが、先ほどのように激しく声をあげてはいない。
 
「あの、あなたは……?」
「この子が迷子になってたから、一時的に保護してたのよお。冷え切って泣いてたから、まずうちに連れてきたの。落ち着いたら警察にも届けるつもりだったのだけど……先にお父さんが来てくれて助かったわあ」
「はあ……」
「……一応聞くけれど、ショーンちゃんのお父さんでいいのよね?」
「は、はい」
「やっぱり! そっくりだもの!」

 すぐわかったわあ、ショーンちゃんはお父さん似なのねえ、と老婦人は続ける。
 一度はテーブルにおいたカップを取ると、再び二人のそばまでやってきて。

「はい、お父さん。ショーンちゃんに飲ませてあげて? あなたの分もこれから用意するわあ」

 そう言って、温かい飲み物が入ったそれをジョンズワートに渡してきた。
 幼子が飲むことを想定してだろうか。火傷しない程度の温度に調整されているように思えた。

「あ、ありがとうございます。あの……」
「いいのよお。お父さんも冷えてるでしょう? ちょっとあったまっていきなさいな。もう1つ用意するから、ちょっと待っててちょうだいね」
「いや、あの」

 ジョンズワートとしては、ショーンが見つかったことを早く報告し、妻の元へ戻りたいのだが……。
 迷子になっていたショーンを保護したという老婦人は、再び部屋の奥へと消えてしまった。
 おそらく、そちらにキッチンがあるのだろう。
 なんともマイペースでゆったりとしたご婦人を前に、公爵としてこの国をわたってきたはずのジョンズワートも調子を乱されていた。
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