若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
「……ショーン?」
「……」

 俯いてしまったショーンに、ジョンズワートが首をかしげる。
 ショーンは、ジョンズワートのことを父と呼ぶようになった。公爵家の長男としての扱いにも、もう慣れている。
 ショーンは、ジョンズワートを自分のお父さんだと思っていた。
 しかし、ジョンズワートのほうはどうかというと。
 自分が父である、父としてショーンを守り育てたいとは思っていたが、嫉妬の対象になるとまでは思っていなかった。
 ジョンズワートが感じていた以上に、ショーンの中で、ジョンズワートは大切な存在になっていたのだ。
 そのことをまだいまいち理解できていないジョンズワートは、俯いて黙る息子を前にして、困ってしまった。
 なにか、気に障るようなことをしてしまったのだろうか。
 おろおろするジョンズワートに助け船を出したのは、やはりカレンだった。

「ショーン。ちょっと待っててね」

 そう言って、ぽん、とショーンの頭に触れると、カレンはジョンズワートに近づき、内緒話をする。

「ワート様。ショーンは、あなたを妹にとられたと思って嫉妬してるんですよ」
「え? 嫉妬……?」
「大好きなお父さんなんですから、当然です」
「だいすきな、おとうさん……」

 カレンの言葉を繰り返しながら、ジョンズワートは、いまだ部屋に入ってこないショーンを見やる。
 ショーンは、悔しそうに、悲しそうに唇をかみながら、ぐす、と泣き出す寸前となっていた。

 大好きなお父さん。嫉妬。

 ショーンがそんなふうに思っていたことを知り、やはりジョンズワートは破顔した。
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