若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 息子の気持ちを感じ取ることができず、申し訳ないことをした。
 しかし、生まれてからの3年を離れて過ごしていた、あとからできた父親だというのに、そんなふうに思ってもらえることが、本当に嬉しくて。
 ジョンズワートは、隣にいたカレンも驚く速さで息子に近づき、がばっと抱き上げた。

「ショーン! ごめんよ、下の子ばかり見て……! もちろん、ショーンのことも大好きだから! 変わらず愛しているよ!」

 あまりの愛おしさに、ジョンズワートがショーンに頬ずりをする。
 ジョンズワートは誓った。自分の子らは、平等に愛すると。
 ショーンの「父親」としての自覚を、もっと持つと。
 だって自分は、ショーンの大好きなお父さんなのだから!
 急にテンションの上がった父に、息子もたじたじである。
 
「ちちうえ、やだ、やめて」

 ジョンズワートの頬に手を置いてつっぱるショーンだが、その声は、完全に父を拒絶してはいなかった。
 本当に嫌なら、もっと暴れるなり叩くなりするだろう。
 しかし、そこまではしない。
 ショーンだって、男の子として成長してきている。
 だから、父とのスキンシップが少し恥ずかしいだけで、こうして抱き上げられ、愛されること自体は嫌ではないのだ。
 
 じゃれあう夫と息子の姿を、カレンは愛おしそうに見守る。
 もう少しの時が経てば、仲のいい父と息子が触れ合う場に、第二子も加わるのだろう。
< 204 / 210 >

この作品をシェア

pagetop