若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
 手紙に目を通したジョンズワートはすぐにアーティを呼び出し、こう告げる。

「この手紙に記されていた地……。ラントシャフトに行く。できる限り早く出発できるよう、調整して欲しい」
「……信じるのか? 差出人もわからない、いきなり届いた手紙に書かれていたことを」
「きみだって、なにかを感じたから僕まで通したんだろう」
「まあ、それはそうなんだけど」

 この手紙をジョンズワートにも見せるべきである。そう判断したのは、他でもない、このアーティだ。
 いくらカレンについての情報だからといって、こんな怪しいもの、なにか感じるものがなければ裏取りもせず公爵に渡したりしない。
 情報源も、真偽も。まだ確認していないのだ。それでも、すぐにジョンズワートまで通された。
 ジョンズワートと同じように、アーティもまた、この手紙は信用できると思ったのだろう。

「で、すぐに出発できるよう調整できそうか?」
「わー。『できる限り』から『すぐに』に変わってるよ。横暴な公爵様だなあ」
「アーティ、頼む」

 おどけるアーティを、ジョンズワートは真剣な瞳でじっと見つめた。

「……わかってるよ。ずっと前から好きだった、奥様のことだもんな。今日出発とまではいかなくとも……可能なだけ早く出られるよう、調整してみせる」
「……ありがとう。きみがいてくれると、本当に助かるよ」
「ただし、それなりの無茶はさせるからな? 公爵様がしばらく家を空けるんだ」
「当然。僕が無理をする程度でなんとかなるなら、いくらでも」
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