新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「あれ? こんばんは。今日は……お独りですか?」
「あっ。いえ……今、高橋さんは駐車場に車を停めに……」
「そうでしたか。どうぞ、お入り下さい。ご案内します」
「は、はい」
こんな大人っぽいお店に、私なんかが1人で入っていって大丈夫かな?
周りを見る余裕もなく、そのままマスターにいつものカウンターに案内されて椅子に座ると、おしぼりをマスターが持って来てくれた。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは」
「こ、こんばんは」
「お飲み物は、どうされますか?」
エッ……。
どうしよう。
「あの……」
ドリンクメニューを見ながら、悩んでしまう。
まだ点滴した後だし、お酒はやめておいた方がいいのかなぁ。でも、せっかく来たのだからカクテルを飲みたい気もするし……。
「高橋さんがいらしてから、お出しした方がよろしいですね」
「あっ。すみません。そうして頂けますか?」
「承知いたしました」
マスターが察してくれたのか、微笑んでくれたのでホッとしていると、ドアが開くと鳴るお店のドアについているベルが鳴った。
「お見えになりましたよ」
マスターがコースターを置いていると、高橋さんが隣に座った。
「こんばんは。いらっしゃいませ」
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