新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「はい」
「そうか! いつもうちが喰らっていることを、今度はうちが利用させてもらうということか」
「それは、名案だ」
「いいですね」
日本エアグループは、バックに巨大なスポンサーを抱えているので、仮にうちの会社が先に取り入れたシステムでも、堂々と直ぐに後から導入してしまう。こちらが、やっとの思いで認可を取り付けたというのに。しかも、それが他社のシステムの良い所だけを取ったものだから、消費者はよりそれを魅力的に感じて、どうしても日本エアグループに人気が集中してしまう。そんな慣例が、過去からの柵のようになっている。
「既存の案件となるわけですから、認可も直ぐに下りるはずです」
意気揚々と意見を述べていた取締役達に対し、高橋さんは冷静にいつも通りの口調で話を続けた。
「それで、高橋君。その国内線に於けるLCC路線の拡大というのは、どうするんだ?」
「はい。それが、お手元にお配りいたしましたレジメの3ページに記載してございます」
そのレジメは、手元に余りが残っていたので、1部をパソコン画面の上で慌てて捲って広げた。
すると、柏木さんが広げたレジメを食い入るように見つめた。
「流石だな」
エッ……。
「余計なことが、一切書かれていない。しかも、見やすい」
見ると、そこにはグラフと数字が書いてあったが、数字よりも色分けしてある日本エアグループと、我が社との国内線の路線別本数と搭乗者数の比較が一目瞭然だった。
「この図にもありますとおり、我が社の弱い路線。即ち、日本エアグループがドル箱としている路線にLCCと既存路線の両便を混在させて、顧客の選択肢を増やしたいと考えています」
「それは、いい。赤字路線を廃止してばかりもいられない。でも運航するには、コストが掛かる。名案ですね」
「そうですね」
「ですが、それならばいっそのこと、コストの掛かる路線。つまり赤字路線は、すべてLCCにしてしまったらどうでしょうか? 社長」
「なるほど。それならば、赤字を減らせて運航も出来るということか」
「そうです。その方が、赤字回収も早いはずです」
「高橋君。君の考えは?」
「……」
社長から問われた高橋さんだったが、いつものように直ぐには返事をしなかった。
どうしたんだろう?
「高橋君」
「そうか! いつもうちが喰らっていることを、今度はうちが利用させてもらうということか」
「それは、名案だ」
「いいですね」
日本エアグループは、バックに巨大なスポンサーを抱えているので、仮にうちの会社が先に取り入れたシステムでも、堂々と直ぐに後から導入してしまう。こちらが、やっとの思いで認可を取り付けたというのに。しかも、それが他社のシステムの良い所だけを取ったものだから、消費者はよりそれを魅力的に感じて、どうしても日本エアグループに人気が集中してしまう。そんな慣例が、過去からの柵のようになっている。
「既存の案件となるわけですから、認可も直ぐに下りるはずです」
意気揚々と意見を述べていた取締役達に対し、高橋さんは冷静にいつも通りの口調で話を続けた。
「それで、高橋君。その国内線に於けるLCC路線の拡大というのは、どうするんだ?」
「はい。それが、お手元にお配りいたしましたレジメの3ページに記載してございます」
そのレジメは、手元に余りが残っていたので、1部をパソコン画面の上で慌てて捲って広げた。
すると、柏木さんが広げたレジメを食い入るように見つめた。
「流石だな」
エッ……。
「余計なことが、一切書かれていない。しかも、見やすい」
見ると、そこにはグラフと数字が書いてあったが、数字よりも色分けしてある日本エアグループと、我が社との国内線の路線別本数と搭乗者数の比較が一目瞭然だった。
「この図にもありますとおり、我が社の弱い路線。即ち、日本エアグループがドル箱としている路線にLCCと既存路線の両便を混在させて、顧客の選択肢を増やしたいと考えています」
「それは、いい。赤字路線を廃止してばかりもいられない。でも運航するには、コストが掛かる。名案ですね」
「そうですね」
「ですが、それならばいっそのこと、コストの掛かる路線。つまり赤字路線は、すべてLCCにしてしまったらどうでしょうか? 社長」
「なるほど。それならば、赤字を減らせて運航も出来るということか」
「そうです。その方が、赤字回収も早いはずです」
「高橋君。君の考えは?」
「……」
社長から問われた高橋さんだったが、いつものように直ぐには返事をしなかった。
どうしたんだろう?
「高橋君」