新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「だから、諸説あると言っただろう?」
「そんなぁ……」
「例えば、芍薬の花ではなく、榧の実を置いて行ったという説もある」
榧の実。
小野小町は、深草少将が榧の実を置いて行くたびに数えていたのかな。
昔の人は、何て純粋で素朴でロマンチストだったんだろう。
「花の色は うつりにけりないたづらに わが身世にふる ながめせしまに」
「百人一首の歌の1つですよね?」
確か、かるたの詠み札に書かれているのは、小野小町の後ろ姿の絵だった気がする。
「そう。紀貫之の六歌仙の歌人の1人にも、小野小町は選ばれている。歌人としての才能にも、長けていたんだろう」
美人で歌人としても認められていた、小野小町。
「美しい花は、時を経るにつれて色あせてしまった。この世にあって、いろいろ思い耽っているうちに。そんな感じの意味だが、色々な出来事を体験してそのことを思い出しているうちに、自分も年を取って色あせてしまったと気づいたんだろう」
「何だか、可哀想ですね」
「きっと、深草少将のことも含め、昔のことに思いを馳せて物思いに耽って気づいたら、年を取ってしまったんだろうな。後悔しても始まらないと気づいた時には、我が人生も終わりに近づいていた。いつの世も、人は悩みながら生きている。お前も、俺も」
高橋さん……。
「前にも同じようなことを言ったが……人は、みんな後悔の連続なのかもしれない。だが、後になってみなければ分からないこともある。それ故に、同じ過ちは2度と繰り返さない。そのことが、人を成長させる。嫌なことであっても、いずれ避けて通れないのなら怯まず立ち向かえ。決して、現実から目を背けるな。いいな?」
「はい」
高橋さんは、何で私のことがこんなにもよく分かるのだろう?
私は、高橋さんのことを殆ど分かっていないのに。
「あの……」
「ん?」
「何故、高橋さんは、私のことをそんなによく分かるんですか?」
「何故? それは……」
「そんなぁ……」
「例えば、芍薬の花ではなく、榧の実を置いて行ったという説もある」
榧の実。
小野小町は、深草少将が榧の実を置いて行くたびに数えていたのかな。
昔の人は、何て純粋で素朴でロマンチストだったんだろう。
「花の色は うつりにけりないたづらに わが身世にふる ながめせしまに」
「百人一首の歌の1つですよね?」
確か、かるたの詠み札に書かれているのは、小野小町の後ろ姿の絵だった気がする。
「そう。紀貫之の六歌仙の歌人の1人にも、小野小町は選ばれている。歌人としての才能にも、長けていたんだろう」
美人で歌人としても認められていた、小野小町。
「美しい花は、時を経るにつれて色あせてしまった。この世にあって、いろいろ思い耽っているうちに。そんな感じの意味だが、色々な出来事を体験してそのことを思い出しているうちに、自分も年を取って色あせてしまったと気づいたんだろう」
「何だか、可哀想ですね」
「きっと、深草少将のことも含め、昔のことに思いを馳せて物思いに耽って気づいたら、年を取ってしまったんだろうな。後悔しても始まらないと気づいた時には、我が人生も終わりに近づいていた。いつの世も、人は悩みながら生きている。お前も、俺も」
高橋さん……。
「前にも同じようなことを言ったが……人は、みんな後悔の連続なのかもしれない。だが、後になってみなければ分からないこともある。それ故に、同じ過ちは2度と繰り返さない。そのことが、人を成長させる。嫌なことであっても、いずれ避けて通れないのなら怯まず立ち向かえ。決して、現実から目を背けるな。いいな?」
「はい」
高橋さんは、何で私のことがこんなにもよく分かるのだろう?
私は、高橋さんのことを殆ど分かっていないのに。
「あの……」
「ん?」
「何故、高橋さんは、私のことをそんなによく分かるんですか?」
「何故? それは……」