新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「旅行もあるしな」
「そうですね……」
何だか、会話がただ単語を並べているだけの単調な感情のこもっていないような無機質な会話になっている。
せっかくお財布を届けに来てくれた高橋さんには悪いけれど、今は早く1人になりたかった。
「そ、それじゃ、あの……わざわざ届けて下さって、本当に申し訳ありませんでした。 ありがとうございました」
高橋さんに、今度はきちんとお辞儀をしてお詫びとお礼の言葉を伝えて顔を上げると、高橋さんと目が合った。
「フッ……。何か、避けられてるみたいだな」
うっ。
高橋さんにそんなことを言われると、やっぱり胸が痛い。
矛盾しているかもしれないけれど、行動と気持ちとがバラバラで、でも心は正直だからどうしても胸が痛くなってしまう。
だけど、今置かれた状況と気持ちを考えると、とてもじゃないけれど上手く言葉に表現なんて出来そうにない。
「クシュン……」
11月下旬ともなると、夜はさすがに冷え込んで来る。
そんな外のひんやりとした空気が入り込んできて、くしゃみをしてしまった。
「ああ、悪かった。出張もあるし、風邪引くなよ。それじゃ、おやすみ」
高橋さんは、左肩で支えていたドアから体を離してドアノブを持ってドアを閉め始めた。
「高橋さん……」
「ん?」
ドアを途中まで閉めかけた高橋さんが、一旦閉めるのを止めて私の呼び掛けに応じてくれた。
「私……」
嫌だ。
今、何を言おうとしている?
今、高橋さんに私は何を言おうとしているのよ。
「どうした?」
そんな、優しく話し掛けないで。
今の私には、その声も、優しさも、温もりも、余計に辛く感じられるから。
言っては、いけない。
口に出しては、いけないの。
でも……。
「私……高橋さんが、よく分からなくなってしまって……」
ハッ!
言ってしまった。
馬鹿だ。
何で、言ってしまったんだろう。
こんなことを言っても高橋さんを困らせるだけで、何の解決にもならないのに。何も得られないと、分かっているはずなのに。
でも、もしかしたらという一縷の望みに賭けてしまったのかもしれない。
ひょっとしたら、土屋さんとのことを話してくれるかもしれないという、僅かな望みにそして期待に賭けていたのかも……。
高橋さんを真っ直ぐ見た。
「そうですね……」
何だか、会話がただ単語を並べているだけの単調な感情のこもっていないような無機質な会話になっている。
せっかくお財布を届けに来てくれた高橋さんには悪いけれど、今は早く1人になりたかった。
「そ、それじゃ、あの……わざわざ届けて下さって、本当に申し訳ありませんでした。 ありがとうございました」
高橋さんに、今度はきちんとお辞儀をしてお詫びとお礼の言葉を伝えて顔を上げると、高橋さんと目が合った。
「フッ……。何か、避けられてるみたいだな」
うっ。
高橋さんにそんなことを言われると、やっぱり胸が痛い。
矛盾しているかもしれないけれど、行動と気持ちとがバラバラで、でも心は正直だからどうしても胸が痛くなってしまう。
だけど、今置かれた状況と気持ちを考えると、とてもじゃないけれど上手く言葉に表現なんて出来そうにない。
「クシュン……」
11月下旬ともなると、夜はさすがに冷え込んで来る。
そんな外のひんやりとした空気が入り込んできて、くしゃみをしてしまった。
「ああ、悪かった。出張もあるし、風邪引くなよ。それじゃ、おやすみ」
高橋さんは、左肩で支えていたドアから体を離してドアノブを持ってドアを閉め始めた。
「高橋さん……」
「ん?」
ドアを途中まで閉めかけた高橋さんが、一旦閉めるのを止めて私の呼び掛けに応じてくれた。
「私……」
嫌だ。
今、何を言おうとしている?
今、高橋さんに私は何を言おうとしているのよ。
「どうした?」
そんな、優しく話し掛けないで。
今の私には、その声も、優しさも、温もりも、余計に辛く感じられるから。
言っては、いけない。
口に出しては、いけないの。
でも……。
「私……高橋さんが、よく分からなくなってしまって……」
ハッ!
言ってしまった。
馬鹿だ。
何で、言ってしまったんだろう。
こんなことを言っても高橋さんを困らせるだけで、何の解決にもならないのに。何も得られないと、分かっているはずなのに。
でも、もしかしたらという一縷の望みに賭けてしまったのかもしれない。
ひょっとしたら、土屋さんとのことを話してくれるかもしれないという、僅かな望みにそして期待に賭けていたのかも……。
高橋さんを真っ直ぐ見た。